皮膚科学会総会2024について

学会のありかたについて考える

1. 皮膚科の想い出

写真は2001年、皮膚科の往診診療をしていたときの町役場に備え付けられた診療室です。これは私が初めて購入したデジカメで撮影しました。皮膚科の診療をするようになって購入したものです。まだ走りのもので高価でしたが、症例の検討のために必要と考え購入しました。

この診療所は近郊の町にあり、市内の勤務先の病院から2週間に一度診療に行っていました。普段の診療は大変に忙しく、当直も多かったですし、当直時間以外の救急呼び出しもしょっちゅうでした。

そんな中、苦労して時間を捻り出して、臨床の勉強をしていました。教科書を読みながら、病院の皮膚科の部屋に残っている過去のカルテと病理組織スライドを照らし合わせながら夜遅くまで勉強して、朝までそのまま病院にいることも多かったです。

2. 第100回総会

そしてこの年に私は日本皮膚科学会総会に初めて参加します。第100回の記念すべき総会でした。東京の京王プラザホテルで開催された学会でしたので、上司に休みをもらって、はるばる長い電車で出席したのを覚えています。臨床の知識の研鑽のため勉強をし、初めての症例報告発表をしました。

当時はずっと皮膚科の臨床をするつもりでしたし、学会でさまざまな新しいことを勉強できたことは楽しかったです。

そして、このときに発表した症例がきっかけとなって、その1年後から博士課程で免疫の研究をすることになり、今に至ります。

3. 皆見賞

その後、学内留学という形で免疫の研究室で博士課程を終え、そのまま基礎の研究をしばらく京都で続けました。そして2008年に皮膚科学会の皆見賞を受賞し、皮膚科学会総会に出席しました。

学会場で慶應の天谷教授から声をかけていただき、「今後も皮膚科の研究を続けてください」と言われたことを記憶しています。

実際いまも悪性黒色腫アレルギー性皮膚炎の実験モデルで研究を続けています。

4. 皮膚科学会のありかたについて考える

日本皮膚科学会総会の公式アカウントの運用に関する問題点をツイッター上で提起したのですが、その後の対応を見る限り、アカウントの逸脱行動や私物化がさらに進行していることに深い失望を感じ、学会運営そのものに懸念を持つようになりました。

日本皮膚科学会総会2024公式アカウントの運用が個人の手に委ねられ、学会事務局の監督下にない場合、これはガバナンスの欠如という重大な運営上の問題です。もしトップの指示に基づいて行動している場合、それは不適切なリーダーシップの問題であり、どちらにしても責任は現会長である椛島健治教授にあります。

主要な問題点は以下の通りです:

1)自己の行動がどのように公に映るかについての配慮が欠けています。これまでのツイートは学会のみならず皮膚科医全般に対する、社会から(たとえば患者さんから)の信頼を失わさせるのに十分な内容です。

2)皮膚科学会のロゴと総会の名前を掲げた公式アカウントのリツイートの中には、運営に関わる京大医局出身教授による書籍の販売促進のためのツイートや、仲間の会員の製品販売の紹介があります。学会の方針に反し、公式が一部の個人の私的な利益のために利用されているならば問題です。

公式アカウントは「イベントアカウント」「ゆるキャラ」の装いをすることでツイート内容が正当化される立場ですが、社会的に不適切な行動が正当化されることはありません。

皮膚科学会総会に研究をしない会員のための場がより重要だという公式とその支持者の皮膚科医たちが主張して行動を正当化していますが、これは私に対してではなく、会頭・事務局に進言されたら良いと思います。皮膚科学会総会は臨床が中心の学会で、その学術的研鑽の場と私も認識しています。

私自身、過去には10年以上のあいだ日本皮膚科学会の会員でしたが、英国での長期滞在とともに臨床から離れたため、臨床研究・実践知識の研鑽を目的とする皮膚科学会からは退会しています(現在も研究に特化した日本研究皮膚科学会には所属しています)。

今年の皮膚科学会総会では前代未聞の17人の海外教授の招待講演があるようです。公式の支持者の皮膚科医たちが研究偏重の傾向を批判して行動したいというなら、この設定が臨床医が中心であるの会員のニーズに合っているのか議論されたらよいと思います。

多くの皮膚科学会会員が診療を停止してでも専門医資格の更新のために総会に参加しているはずです。多数のセッションが臨床知識の更新を目的として開かれており、多くの会員が真面目に皮膚科の学術的研鑽のために参加します。その人たちに失望をさせないような学会運営を望んでいます。