Tocky登場
小野ラボからのTocky論文第一号
2013年、私は栄誉あるBBSRCデイヴィッド・フィリップス・フェローシップを授与されて、研究者として独立し。蛍光タイマータンパク質-Timer-of-cell-kinetics-and-activity(Tocky,「とき」)を用いて、T細胞活性の時間的動態を解析する新しい方法論を開発する画期的なプロジェクトを開始した。
これは2018年に出版された画期的論文 (Bending et al., 2018)に結実した。
抗原シグナル伝達を正しくレポーター遺伝子としてのNr4a3の発見
2013年にユニバーシティ・カレッジ・ロンドンに私の研究室を設立すると、私は生体内におけるT細胞の動態を理解するための全く新しいアプローチの開発に着手した。
正準対応解析(Canonical Correspondence Analysis)により、Nr4a3は胸腺と末梢の両方でT細胞受容体(TCR)のシグナルを受けたT細胞と最も相関の高い遺伝子として浮かび上がった。
重要なことは、Nr4a3は安静時のT細胞やB細胞では発現していないことである。しかし、抗原シグナル(特に同族抗原シグナル)は、T細胞とB細胞の両方でNr4a3の発現を誘発する。
Nr4a3-Timerレポーターマウス(Nr4a3-Tocky)の開発
タイマー方法論を創出することが、私の研究室での主要プロジェクトとなった。
私は、新しい動物モデル開発のための時間とリソースを最大限に活用するため、スタッフを誰一人雇うことなく一人で実験・研究に邁進した。
Nr4a3-Timerレポーターマウス(Nr4a3-Tocky)の開発は、いくつかの理由からバクテリア人工染色体法を採用した。そして2013年にNr4a3-Timerマウスの開発に成功したのは、日本におけるトランスジェニックマウス系統作製の豊富な経験があったからである。
このようにしてTockyマウス系統を樹立したゆえ、私は研究スタッフの雇用をはじめることにする。2014年、私は技官を雇用して遺伝子導入コロニーを拡大し、2015年にはポスドクを採用した。
Tockyとはどのようなものか。
TCR刺激を受けると、Nr4a3-Tocky T細胞は最初の数時間以内に最初のタイマー青色蛍光を示し、タイマータンパク質が成熟するにつれて徐々に赤色蛍光に成熟する。持続的な転写活性は、興味深いことに、青軸と赤軸の間の対角線に沿って細胞が集積する。
論文発表にともなう困難と忍耐力
順調なスタートにもかかわらず、私たちは大きな障害に遭遇した。編集者も査読者も、タイマー・システムの重要性を認識することができなかったのだ。興味深いことに、多くの人がタイマーのアプローチは「目新しさがない」と主張した。しかし、これはむしろTocky方法論の真の新規性を証明するものであると思う。
正確な数を数えて、将来の参考のために彼らのコメントをまとめて発表したいと思っている。
新しいTockyデータ解析法の開発
出版の困難にぶつかったことが、むしろ私の2つ目のイノベーションを促した。それは、Timer蛍光データを解析するための、データ指向型Timer蛍光解析手法の開発である。
上図に示すように、Timerの蛍光データは連続的であるため、Timerの能力を十分に活用するには、従来の手法では限界があり、Timerの能力を十分に生かすことができないことが浮き彫りになった。
私は、Timerのデータ構造に合わせた新規アプローチ開発の必要性を認識する。
これがTimer Angleとして知られる新しい三角法データ変換を開拓した。この革新的なアプローチの詳細については、今後のブログ記事で紹介する予定である。
定量的なデータ解析手法と綿密に設計されたTimerレポーターシステムを備えたTockyテクノロジーは、免疫学とそれ以外の分野にユニークなソリューションを提供する。
References
2018
- A timer for analyzing temporally dynamic changes in transcription during differentiation in vivoJournal of Cell Biology, Sep 2018The foundational publication introducing Tocky technology by the Ono lab, marking a breakthrough in T cell and B cell studies.